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石川啄木詩歌研究への射程
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石川啄木詩歌研究への射程

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目次
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石川啄木(1886-1912)の詩歌をはずして日本の近代詩歌史を精密に語ることはできない。それほどに石川啄木の詩歌は、詩歌研究全般にかかわる、多様で豊潤な表現方法や問題意識を内包している。たとえば本書の諸論考では、啄木詩歌における表現について、思想、歴史、受容、定型、韻律、修辞、歌語などの多角的で先進的な視点から論じられているように、詩歌研究への射程がいかに計り知れない奥行きをもつものであるか、が理解できよう。
本書の論考によって、多くの読者が啄木詩歌の発想と表現がもたらす清新な韻文の魅力を味覚するにとどまらず、編者としては詩歌研究そのものの発展が国際日本学の深化に寄与することを、心から期待している。

要細說日本近代詩歌史,則無法忽略石川啄木(1886-1912)的詩歌,因為石川啄木的詩歌涵蓋了豐富多樣的表現方法及問題意識,與整體詩歌研究息息相關。本書各篇論文從思想、歷史、受容、定型、韻律、修辭、歌語等多方視角與前衛的觀點,探討石川啄木的詩歌表現,可見詩歌研究是具有如此深不可測的內涵。
透過本書論考,不僅期許讀者們可以玩味啄木詩歌中,他的發想和表現所帶來韻文清新的魅力,身為本書編者也由衷期許詩歌研究的發展,能深化國際日本學研究。
 

作者簡介

■林 水福(りん すいふく)
台湾雲林生まれ。輔仁大学東方語文学系卒(1976)。東北大学大学院、(日本)文学博士(1993)。中国青年寫作協会理事長。中華民国日語教育学会理事長。台湾文学協会理事長。輔仁大学教授、系主任、所長、外語学院院長。国立高雄第一科技大学教授、外語学院院長、副学長。台北駐日経済文化代表処 台北文化センター初代センター長などを経て、現在、南臺科技大学教授。著書に『現代日本文学掃描』(鴻儒堂出版社、1996)『日本文学導遊』(聯合文學、2005年)『源氏物語的女性』(三民書局、2006)『中外文学交流』(共著、台湾書店、1999)など。主な訳書に遠藤周作『深い河』、『沈黙』、『侍』、『海と毒薬』、『深い河創作日記』、井上靖『蒼き狼』、谷崎潤一郎『瘋癲老人日記』『細雪』『痴人の愛』『卍』『鍵』『少将滋幹の母』、辻原登『飛べ麒麟』などがある。

■太田 登(おおた のぼる)
日本・奈良市生まれ。1971年天理大学文学部国文学国語学科卒業。1977年立教大学文学研究科博士課程修了。2005年文学博士(立命館大学)。天理大学名誉教授。前台湾大学日本語文学系教授。専門は日本近代文学(とくに日本近代短歌史)。主要著作は、『啄木短歌論考―抒情の軌跡』(八木書店、1991年)で啄木文学賞。『日本近代短歌史の構築―晶子・啄木・八一・茂吉・佐美雄―』(八木書店、2006年)、『与謝野寛晶子論考―寛の才気、晶子の天分―』(八木書店、2013年)などがある。

序文(摘錄)
林水福

林丕雄先生から台湾啄木学会のバトンを受け取ってから、あっという間に数十年が過ぎてしまった。これまでを振り返れば、学会に対し、特に私にご教示くださり手助けしてくださった国際啄木学会の先人の方々に対し、深く申し訳なさを感じずにはいられない。

今回、私が在職している南台科技大学応用日本語学科の創設20周年に際し、国際啄木学会を台湾にお招きしシンポジウムを開催する。その目的は、より多くの台湾人に石川啄木という日本短歌史上、すばらしい詩人を知らしめることである。

私がいう台湾人とは、学術関係者だけでなく一般人をも含んだものである。言い換えれば、学者のみならず、いわゆる普通の文学愛好者にも石川啄木に触れる機会を作りたいと思ったのだ。

以前、日本ではNHKが石川啄木を紹介する番組を放送したり、国際啄木学会が東京の八重洲ブックセンターで一般民衆を対象にした講演と座談会を行った。私の出発点も同じである。それは文学が学者の特権ではなく、すべての人々が享受すべきものであるということだ。啄木の文学でいえば、日本と台湾だけではなく、全人類が共有すべき文学資産であり、享受すべき宝物なのである。これはまた国際啄木学会創立当初の主旨や目的の一つではなかっただろうか。

私は中華民国ペンクラブによって、台日詩歌朗読会を実施する予定である。日本人と台湾人が詩歌を朗読し、台湾の人々が日本と台湾の詩歌の美しさを鑑賞する場とするためだ。もちろんそこでは、啄木の短歌も朗読され歌われることとなる。啄木の短歌はすでに多くの作品に曲がつけられ、たくさんの人が歌っている。

次に、啄木で最も人口に膾炙しているのは、三行書きの短歌である。よく知られているのは、『一握の砂』と『悲しき玩具』の2冊の歌集である。以前、林丕雄先生が中国語に翻訳したものがあったが、しかし今ではこれらを本屋で手に取ることは難しくなってしまった。それに解釈がまったく異なっており、私が訳したいテイストとはかなり違っているため、非力ではあるが、なんとかこの2冊の歌集の、合計751首の短歌を中国語に翻訳し、有鹿出版社から出版することができた。これについては、国際啄木学会の会長を前後して務められた太田登先生と望月善次先生、そして推薦文をいただいた啄木文学館の森義真館長に、多くのご支援とご指導をいただいたことに感謝申し上げたい。

作品の良しあしを論じ、作品を読解していくという面では、やはり研究者、つまり専門家や学者でなければなかなかできないことである。啄木の作品、短歌、現代詩、小説、評論、ローマ字日記の中で、外国人に最も受け入れやすく、代表的であるのは詩歌にほかならない。

このため、この論文集のタイトルを「石川啄木詩歌研究の射程」とし、その代表作『一握の砂』と『悲しき玩具』と現代詩に焦点をしぼった。

今回、この論文集が出版されたことについては、まず徐興慶先生のお力添えに感謝しなければならない。この書籍が日本学研究叢書に加えていただけたことは、啄木研究にとって大変大きな意義を持つものである。感謝の念に堪えない。

次に、事務的な面で多大なご協力をいただいた徐雪蓉さん、林姿瑩さんに感謝したい。

最後になるが、論文を執筆してくださった書き手のみなさんにお礼申し上げる。特に、ともに編集を担当してくださった太田登先生は、編集のご指導のほか、難題にぶつかった時にはいつもご相談させていただき、すばやく解決に導いてくださり、実にありがたかった。

目次

序文 林 水福
第一章 啄木短歌の評釈への試み―〈放たれし女〉の歌の解釈をめぐって―(太田 登)
第二章 石川啄木と朝鮮―「地図の上朝鮮国にくろぐろと~」の歌をめぐって―(田口道昭)
第三章 王白淵における啄木文学の受容についての一考察―『棘の道』の詩歌を中心に―(劉 怡臻)
第四章 啄木「三行書き短歌」再考―何故「三行書き」が過大評価されたのか―(望月善次)
第五章 啄木短歌における音楽性についての一試論―主に『一握の砂』をめぐって―(高 淑玲)
第六章 石川啄木詩歌におけるオノマトペの考察(池田 功)
第七章 歌語からみた啄木短歌の傾向―『一握の砂』を中心に―(山田武秋)
編集後記
索引
編集者略歴
執筆者略歴(執筆順)

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